屋根の角度「屋根勾配」の決め方|メリット・注意点を押さえたうえで決めよう
注文住宅を建てる場合、間取りや内装、外観などさまざまなことを決めなければいけません。外観の一部である屋根について、素材やデザインなどにこだわりがある人は多いかもしれませんが、屋根の角度まで考えたことのある人は少ないのではないでしょうか。
屋根勾配と呼ばれる屋根の角度は種類が大きくわかれ、それぞれに特徴やメリット、デメリットがあります。今回は、屋根勾配の種類や特徴、最低勾配数について解説していきます。
屋根勾配(やねこうばい)とは
屋根勾配とは、屋根の角度を指す言葉です。そもそも屋根には、雨風や日射を防ぐ役割があります。
・雨風や日光を凌ぐ
・温度を調節する
・住宅を守る
このうちの一つである雨風を凌ぐためには、屋根の傾斜が必要です。屋根に角度がないと、屋根のうえに乗った雨を流せないからです。雨が屋根のうえで留まり続けると、雨漏りや屋根が崩れる原因になってしまいます。
しかし、防水技術が発達した近年では、屋根勾配がほとんどない水平屋根やストレート屋根の住宅も登場しています。そのため、屋根勾配は必須ではありませんが、水はけをよくしたり最上階の温度調節をしたりするには、勾配屋根がおすすめです。
屋根の角度を示す「勾配数」の表示方法
屋根勾配を表示する方法は3つあります。それぞれの内容は以下のとおりです。
尺貫法勾配(寸法勾配)
尺貫法勾配は寸法勾配とも呼ばれ、長さの単位である寸を使った表示方法です。寸は聞き馴染みの少ない単位かもしれませんが、建築業界では今でも主に使われています。1寸は約30.303mmで、1寸=1尺です。
たとえば屋根勾配が3寸勾配と表示されていると、縦3寸・横10寸の直角三角形型の勾配屋根です。この場合、傾斜角度は約16.7度です。
分数勾配
分数勾配とは、勾配数を分数で表す方法です。3/10と表示されていると、縦3寸・横10寸の直角三角形型の勾配屋根となり、3寸勾配と同じといえます。4/10は2/5、5/10は1/2など、約分して表されることも多いです。
直角三角形を作る際、縦の数字が大きくなればなるほど角度が急になりますよね。そのため、3/10より4/10のほうが、4/10より6/10のほうが急勾配の屋根になります。
角度勾配
角度勾配とは、屋根の角度をそのまま表示する方法です。3寸勾配は約16.7度、4寸勾配は約21.8度、5寸勾配は約26.6度、6寸勾配は約31度です。
角度勾配は角度が一目でわかるため、どれくらいの傾斜かがすぐイメージできますよね。一番わかりやすいと思われる角度勾配ですが、建築業界ではあまり馴染みのない表記方法です。建築業界では、一般的に尺貫法勾配(寸法勾配)が主に使われます。
屋根の勾配によって異なるメリットと注意点
住宅によって、屋根の角度はさまざまです。ここからは、屋根勾配ごとの特徴やメリット、注意点を解説していきます。屋根勾配は、大きく分けて3つの種類があります。それぞれの内容は以下のとおりです。
急勾配屋根の場合(6寸勾配以上)
急勾配屋根とは、6寸勾配、約31度の傾斜がある屋根のことです。急勾配屋根には以下のメリット・デメリットがあります。
<メリット>
・雨水が流れやすい
・スタイリッシュに見える
・屋根裏の空間を広く使える
<デメリット>
・屋根面積が広い
・屋根足場が必要になる可能性が高い
角度が急な急勾配屋根は雨水が流れやすいため、雨漏りやカビ発生のリスクを減らせ ます。急勾配屋根独特の、スタイリッシュな外観もメリットの一つです。屋根裏のスペースを多く取れるため、ロフトや屋根裏収納など空間を有効活用できます。
ただし、屋根面積が広いぶん屋根工事や屋根修理、屋根リフォームなどにかかる費用が多くなってしまいます。高さが出るため、屋根足場も必要になりさらに費用がかかるかもしれません。
<急勾配屋根がおすすめの人>
・屋根の水はけが気になる人
・室内のスペースを広く作りたい人
・スタイリッシュな外観の家にしたい人
並勾配屋根の場合(3寸~5寸程度)
並勾配屋根とは、3寸勾配から5寸勾配、角度でいうと約16.7度から約26.6度の傾斜がある屋根を指します。並勾配屋根のメリット・デメリットは以下のとおりです。
<メリット>
・一般的に使われている
・屋根材を選ばない
・コスパが高い
<デメリット>
・他の家とデザインが似る
・平凡な印象になりがち
並勾配は、多くの住宅でもっとも使われている種類の屋根です。そのため、工事やメンテナンスに対応している業者が多く、トラブルが起きたときもさまざまな方法で対処できます。瓦屋根や金属屋根など、ほとんどの屋根材の使用が可能です。足場を建てる必要もないため、コスパが高い屋根だといえます。
しかし、多くの家で使われているということは、個性を出しにくいということです。平凡な外観になりがちなので、特徴的な家にしたい人には向いていません。
<並勾配屋根がおすすめの人>
・家づくりのコスパを気にする人
・さまざまな屋根材を使いたい人
・デザインにこだわりがない人
緩勾配屋根の場合(3寸勾配以下)
緩勾配屋根とは、3寸勾配、約16.7度以下の傾斜がある屋根です。緩勾配屋根にはこのようなメリット・デメリットがあります。
<メリット>
・風の影響を受けにくい
・屋根面積が少ない
・落雪のリスクが少ない
<デメリット>
・雨水が流れにくい
・屋根材が限られる
緩勾配屋根は風の影響を受けにくいため、台風や強風が多い地域にとくにおすすめです。屋根面積が少ないため、屋根工事や屋根修理、屋根リフォームなどにかかる費用も抑えられます。雪が屋根に積もっても落雪するリスクが少なく、雪による事故の心配も少ないです。
ただし、雨水が留まりやすいため雨漏りやカビ発生の可能性が高くなります。並勾配屋根と違い対応できる屋根材が限られるため、好みの屋根材を使えない可能性もあります。
<緩勾配屋根がおすすめの人>
・台風や強風が多い地域に住んでいる人
・雪が多い地域に住んでいる人
・工事費用を抑えたい人
屋根材の種類によって「最低勾配」が決まっている
屋根勾配は、屋根材の種類や形状で必要最低勾配数が定められています。屋根材が金属の場合は1/10勾配、ストレート屋根なら3/10勾配、瓦屋根なら4/10勾配よりも急角度な傾斜の屋根が必要です。
必要勾配数を守らなければ、雨漏りや劣化のリスクが高まります。そのため、屋根材ごとに必要な最低勾配数は必ず守りましょう。
まとめ
屋根勾配とは、屋根の角度を表す言葉です。屋根勾配には3つの表示方法がありますが、建築業界で主に使われるのは尺貫法勾配(寸法勾配)です。
屋根勾配には3つの種類があり、それぞれ特徴やメリット、デメリットが異なります。選ぶ屋根材によっては必要な最低勾配数が定まっているため、屋根材が決まったら確認しておきましょう。
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